勾玉日記

黒川 和嗣のブログです。

"ニューノーマル 五感的解像度を生きる「発酵経済と五感的解像度」5/5"

 黒川 和嗣(くろかわ かづし)です。"発酵経済と五感的解像度" では感染症対策とテクノロジーによってもたらされる社会変革をマトリクス図を用いて考察しましたが、ポイントは"地方分散化"、消費経済から"発酵経済"へ、外需や内需と並ぶ"仮想需要の台頭"でした。これらは単なる社会変容というだけではなく、人口減少へと向かう"日本の成長戦略"にもなり得るテーマなのです。

 例えば大量生産、大量消費を行うには多くの人口が必要となりますが、島国特有の連綿と続く文化や歴史のように、時間軸に価値基準を設けることが可能となれば、埋蔵資産が多い日本には有利に作用し更に、仮想需要がスケールしたとしても"五感の再現性"はまださほど高くはないので、地方の観光には十二分に価値があります。このようにテクノロジーによる省人化だけではなく、少ないリソースを活かし価値を最大化する社会変容こそが今回の "コロナがもたらす作用" の本質となるのではないでしょうか。

 今回は、"発酵経済と五感的解像度"で炙り出された将来像を元に、五感的解像度を軸足として、今から議論を進めておきたい中期的な課題を考察したいと思います。

  「発酵経済と五感的解像度」5/5

第1項 "大省人化社会の幕開けと仮想需要"

第2項 "出口戦略から次のフェーズ"

第3項 "発酵経済と五感的解像度"

第4項 "Withコロナの虚像と深淵からの手招き"

第5項 "ニューノーマル五感的解像度を生きる" 

 


■ニューノーマル 五感的解像度を生きる
 再三指摘しているように、現代のテクノロジーでは "人間の五感" を再現出来る程のサービスはありません。勿論、個別の研究としては進んでいますがサービスとして浸透するには至っていない、という意味でです。そして人間をはじめ多くの生物に於いて、フィジカルなコミュニケーションを行わないことは、生物的にも心理的にも容易ではありません。つまり、今回の自粛でも心理的負担が課題とされていたように、雑多なシステムはオンラインに置き換えられても、"五感的解像度" が重要視される分野では大きな変革はまだ起きないと想定されます。

 そうなると、感染症の観点から "ヘルスケア情報"が重要となってきます。このヘルスケア情報には、歯周病やワクチン接種のような予防医療情報や抗体情報が含まれ、それを”信頼”としつつ身体接触が許容されるしかありません。個人情報など現実的かの問題はさておき、今回のゼロリスクを目指した自粛を"正"とするのであれば、抗体リストや予防医療義務は必要不可欠でしょう。特に日本の場合は社会保障費が財政の圧迫にもなっているため、官民の取り組みで社会実装してみると良いかもしれません。


 さて、五感的解像度に話を戻すと、例えばスポーツやライブの臨場感であったり、観光地の空気感などは "五感的解像度" が求められる分野で、即デジタルに代替えとはいかないでしょう。但し、それはアナログのサービスに拘るという保守的なビジネスモデルではなく、最大のポイントとして、サービスや導線はデジタルコンテンツを用いつつ "フィジカルな体験を高め、補うこと" です。

 例えば、スポーツでは現行の放映権だけではなく、ドローンによる"空撮映像"とゲームなどで用いられる音声システムを組み合わせることで、試合の"五感性"である臨場感を新たな映像体験サービスとして提供することも考えられます。また、この点では観光業でも応用が可能で、"プレ観光"などサービス導線としてバーチャルによる観光体験を行えば、実際の観光を引き立たせるプロモーションの役目にもなります。つまり従来のように、デジタルを利用しないのでもなく、全てをアバターや仮想空間に置き換えられるのでもなく、五感的解像度を価値基準としながらサービスや市場を広げることが、今後のイベントやスポーツ、観光業などにとって重要な要素となります。

 


 本日はここまでです。5回に亘り、"社会変革が起こす作用と五感的解像度"について考察を行って来ました。今般、メディアや識者、政府や企業などがあらゆる角度で分析を行っている "コロナ禍" "Afterコロナ" "Withコロナ" "デジタル革新" などの社会変容について、短中長期に区分しここに網羅できたかと思います。

 短期的には、自粛による失業と旧制度と新制度の狭間で発生する格差を内包しながら、感染症対策を社会インフラとして意識する社会へと向かい、中期的には、ヘルスケア情報やマイナンバー制度など情報の管理と国際的な安全保障へ議論が移り、市場は徐々に仮想需要と五感的解像度へと分かれ、長期的には政治もしくは人口の地方分散化が進み、発酵経済、仮想需要の確立へと移り変わる、といったシナリオが、前述の "~コロナ"関連に於ける共通シナリオとして想定されます。この一連の流れの中で、明確な課題は "余剰人材の活用" "地方分散化と発酵経済の構築" "個人情報保護の安全保障化" "医療リソースの国際共有資産化" です。  


 ここまで社会変容を細分化し、浮き彫りとなったこれらの課題を議論することで、妄想のうようでありながら、実装することが求められる "仮想需要と五感的解像度" が実現可能となるのではないでしょうか。単なるポジショントークや、不安心理の扇動、政治利用などではなく、このような課題視点で議論が今、求められています。

 

 

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