勾玉日記

黒川 和嗣のブログです。

"国際社会に発信された「日本司法の闇」"

 黒川 和嗣(くろかわ かづし)です。先月より私事で時間を取られてしまい、久しぶりの更新となってしまいました。今回は「芸術」をテーマにと考えていましたが、予定を変更し「日産のゴーン氏問題」を取り上げたいと思います。
 この問題は単なる「日本企業の不正」や「外資と国産企業の対立」などではなく、国際社会における日本の国民国家としての質を決定付ける事案だったと感じています。また、ゴーン氏の問題に関しては他方でも散々論じられていますが対して、違和感のある特捜の劇場型逮捕に関しては、如何せん報道のウエイトが置かれていないようなので、その視点で紐解いてみましょう。

 

「日産がもたらした司法制度の闇」1/2

第1項 "国際社会に発信された「日本司法の闇」"

第2項 "Carlos Ghosn氏と司法制度の本質"


■コーポレート・ガバナンス
 そもそもこの問題の根幹は、1999年に日産の財務更生を行うため、ルノーと行った「提携内容」と、その後の日産取締役が構築したであろう「コーポレート・ガバナンス」にあり、マスメディアで報道されている多くの問題がルノー、ゴーン氏側だけの問題のように扱われるべきではないでしょう。
 特に、日産の役員が本件に関し、把握をしていない状況下で、特捜と朝日新聞が先行していた点などには、違和感と言いますか、企業運営や捜査方法への"疑念"を抱かざるを得ません。何故なら多くの場合は、社内調査を行い取締役員会にて議論を行う事が先で、また罪が確定するまでは推定無罪とされるものです。
 この点だけでも、日産が企業として機能していたのかを疑問視してしまいます。

■異常な報道メディア
 当初の容疑は「金融商品取引法違反」だった筈が、連日のメディアでは報酬額や借家の問題が取り沙汰されまた、中韓の技術優遇など経営方針にまで及ぶ一方で、1999年の提携内容や検察の逮捕内容の精査は行われずに、ゴーン氏へのイメージ悪化を無暗に助長する結果となっています。
 この点は、本件だけではなくマスメディアにはよくある傾向で、しばしば「悪であろう者を叩く空気感」に支配されてしまいます。是々非々で、悪い物をわるいと言うならまだしも、良い物ものまでも悪いと扇動してしまいます。これは事案の大小に関わらず、見直すべき異常な習慣です。

■日産と特捜
 前述にもある違和感として、朝日新聞へのリークと、ゴーン氏が帰国した機内での逮捕、そして直ちに行われた西川社長の会見などです。これは注目を集める劇場型逮捕として、好まれる手法でしょう。
 しかし、従来のように国内問題であれば「組織の信頼性」を問われるだけでしたが、今回のような国際問題であれば「国家の信頼性」が問われる事態となり、果たして検察は、国際社会を納得させ得る説明を行う事ができるのかどうかが焦点となります。
 その為に、日産側が迅速な解決を目指すのであれば、本来はこのような劇場型ではなく、日産・ルノー双方への丁寧な根回しを必要とした筈です。
 しかし今回は日産の思惑がどうであれ残念ながら、「日本の検察権力は企業間問題に影響し、外国籍経営者へ不当な圧力を与える」というメッセージを発信する事となり、「国家の信頼性」を見事に失墜させ国益を損ねてしまいました。

 ここまで綴ってきた中で確かに、団体や企業、メディア、政府などによるロビー活動は、どこの国でも存在し、国家による圧力も当然存在します。
 しかし国民国家とは、表向きは国際法を順守し、条約を順守し、自国憲法を順守し、それをメッセージとして正しく発信させることで、成立してきた訳であり、劇場型として国家権力が、国際社会へ誤ったメッセージを発信してしまう事は、国家として、日産として、検察として、大きな損失ではないでしょうか。
 これらは法廷などの性質上、直ちに国家間や経済に影響が出る事案ではありませんし、当のフランスではさほど大きく報じられてはいませんが、グローバル化のスピードが指数関数的に早まる現代において、昭和のレガシーと向き合わなければ、更に大きな問題へと発展する可能性すらあるのではないでしょうか。その点を踏まえて皆さんには今一度、本件を再考察して頂ければ幸いです。


 本日はここまでにします。年の瀬に明るくないテーマとなってしまいましたが、新年に向けて雑多になりがちだからこそ、大切な本質を多角的視点で見極める必要があるのではないでしょうか。
 それでは、本年もありがとうございました。皆さんにとって来年が良い年になる事を祈っています。よいお年を。

 

 

 

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Photo: DayronV