勾玉日記

黒川 和嗣のブログです。

"BLACK LIVES MATTER を対岸から叫ぶ前に 「日本よ、目を背けるな」1/4"

 黒川 和嗣(くろかわ かづし)です。今般、香港や米国のデモ活動、日本の誹謗中傷など、感染症を引き金として、社会の抱えている歪みが、底知れぬ不安として顕在化しています。新たな”チャイナリスク”を露呈してしまった中国は、デジタル通貨や海洋進出、香港の統制力強化などを用い、急速にイニシアティブを握ろうとしています。米中対立が東西対立へと移行しては、今の中国にとっても厳しい戦いとなり、可能な限り国際社会での駒を確保しておきたいところでしょうか。

 一方米国は、感染症による失業者や感染者層の問題と黒人男性の死が重なることにより、不満が爆発してしまっています。トランプ大統領が暴力を助長し反人権姿勢を行っているような指摘が多いですがもう少し短絡的で、選挙を念頭に民主党州知事との対立及び、暴徒の鎮圧に主眼をおいています。その上で、軍隊の自国投入のような米国の歴史を無視した”政治的センスの問題点”が際立ってしまっているのです。つまりトランプ大統領は、ロックダウンの緩和に慎重派だった民主党州知事達との対立を、人種問題とは別の”選挙戦”というレイヤーで争っているが故に、デモを刺激し続ける結果を招いています。

 トランプ大統領の”異質さ”は一見、柵(しがらみ)がなく力強い変革路線のようにも映りますが、それは小国の長であれば正しいのかも知れません。しかし、世界の経済、安全保障を担う”大国のアメリカ大統領”が他国や自国民と対立し、自身の政策を優先してしまった場合、世界の均衡を大きく損なってしまいます。本日は、米国を中心とした国際社会と日本のポジションについて考察を行いたいと思います。

「日本よ、目を背けるな」 1/4

第1項 "BLACK LIVES MATTER を対岸から叫ぶ前に"

第2項 "口当たりの悪さの先に,喉ごしの良さが待っている"

第3項 "若者は選挙へ行こう!、は虚無の世界線"

第4項 "社会変革のための,義務教育トランスフォーメーション"

 

 

■米国に根差す人種問題
 米国のAfrican-Americanへの差別問題は他の差別とは異なり、権利や格差だけに由来すせず、”African-Americanであること”にこそ由来し差別の対象としているのです。この点を理解しなければ、運動のエネルギーへ共感することも出来ないでしょうし、解決への出口を見つめることも出来ないでしょう。例えば、”差別は良くないので権利を見直そう”と議論してみても、先に触れたように権利の問題ではなく”人種”そのものの問題なので、本質的な解決には至りません。

 つまり、多数決の民主主義政治に於いて、この問題を解消するには”人種のマジョリティ化”とそれに伴う、”若年層の意識変化”しかないのです。その上で、今回の警官問題のように局地的な課題に対して抗議などの圧力を与え、制度設計を整えるしかありません。

 日本のKuToo運動のような一時的ムーブメントではなく、米国の歴史に根差したセンシティブな話題であることが伺えます。そしてトランプ大統領の発言や対応は見事なまでに、求心力を発揮せず民主党との対立構造として、分断を強化してしまっています。
 米国内に渦巻く人種問題の本質は、善悪や良心などではなく、民主主義政治と大統領選の2つのレイヤーによるものでしょう。


■大国 "アメリカ" の喪失
 そもそもトランプ政治は、米国が世界の大国として行ってきた ”世界秩序形成へのコミットメント” を尽く壊してしまっています。確かに、ビジネス上のディールとしては正しいのかも知れませんが、大国の在り方としては大きく間違ってしまっています。貿易赤字問題でも米ドルが基軸通貨である以上、流動性を高めるには赤字にはなるもので、赤字以上の恩恵を米国が受けられる代わりに、西側諸国の社会形成へ尽力してきたました。ここには帝国主義的な発想や白人至上主義のような傲慢さも存在しますが、その反面、連綿と続いた民主主義社会の成熟への貢献も存在しています。

 紛争や利権が耐えない国際社会に於いて、民主主義国家側の”秩序形成役”が不在となってしまった今般、大国におもねる世界秩序から ”各国が自走する世界秩序" と、分断ではない ”シームレスなアライアンス” に移行するフェーズにあるように思います。

 

■日本が進める国際協調路線
 昨今、米国は対中強硬路線を貫く反面、アジア地域の安全保障へのコミットメントを下げようとしています。勿論、本当の意図は軍事力の提供と引き換えに、防衛費の負担増を求めるもので、実際に軍隊を引き上げるという訳ではありません。それは、東西対立構造の防衛ラインを撤廃することに等しいので、トランプ大統領が強行したとしても米国議会が許さないでしょう。このようにコミットメントを下げたいトランプ大統領の思惑と、防衛ラインを維持したい西側諸国の思惑、そして新たに顕在化したChina riskなどを鑑みると、少子高齢化によって経済成長が大幅に減衰する日本の在り方が見えてきます。

 つまり日本国内の改革も必要になるのですが、諸外国との協調、特に東アジア諸国とのアライアンス及び秩序形成へのコミットメント(軍事、経済、医療)強化が重要な成長戦略となり尚且つ、分断に向かう国際社会を ”協調” へと導く牽引役として、貢献できるのではないでしょうか。また、オリンピックという世界各国が参加する”平和の祭典”を行うにあたって、この”世界協調の牽引”は各国のコンセンサスが取れる絶妙なタイミングのようにも思います。(国際社会のコミットメントは過去記事のこちらを参照下さい。”国家相互依存性”

 


 これらは無闇な日本称賛論ではなく、現実的に日本に必要な成長戦略と世界の潮流を鑑みた結果です。日本でもBLACK LIVES MATTERが話題となっていますが、単なる人権の文脈だけで語るのではなく前述の通り、人種の人口比率と大国としての覇権、そして大統領選の対立であることを理解し、議論をしなければ、日本の立ち位置や国際社会へ本当の意味での貢献が出来ません。
 差別や人権は、BLACK LIVES MATTERだけではないように、香港問題、拉致問題、国内のジェンダー問題など数多く存在します。口当たりの良い内容だけを、”対岸”で声を上げるのではなく、日本が国際社会への責任を担うことが今、求められているのではないでしょうか。

 本日はここまで、次回は日本に内包する問題について、考察を行いたいと思います。

 

 

※記事を読んで下さる皆様へ.本稿の内容に興味をお持ち頂けたなら、大変に光栄です.

  有難うございます. お気軽にTwitterで交流をして下さいね. 

[黒川 和嗣(Kazushi Kurokawa)Twitter ]

 

f:id:KKUROKAWA:20200617162613j:plain

Photo by Kevin Lanceplaine on Unsplash