勾玉日記

黒川 和嗣のブログです。

"若者は選挙へ行こう!、は虚無の世界線 「日本よ、目を背けるな」3/4"

 黒川 和嗣(くろかわ かづし)です。前回はゼロリスクを求める過度な自粛や、国際社会への責任や貢献を伴わない人権主張、男女各々のポジショントークに根差す差別運動など、口当たりの良いことに終始する日本の風潮に問題提議を行いました。過度な自粛には経済損失、国際的人権運動には安全保障、男女差別是正には特権の剥奪など、社会はtrade-offであり、課題解決には必ず "口当たりの悪さ"が伴うものです。
 今回は引き続き、日本に横たわる "口当たりの悪い社会課題"について考察を行います。

「日本よ、目を背けるな」 3/4

第1項 "BLACK LIVES MATTER を対岸から叫ぶ前に"

第2項 "口当たりの悪さの先にこそ,喉ごしの良さが待っている"

第3項 "若者は選挙へ行こう!、は虚無の世界線"

第4項 "社会変革のための,義務教育トランスフォーメーション"

 


社会人幻想論

 前回、少子高齢化の文脈に於ける女性の社会進出問題をテーマとして取り上げましたが、この問題には根本的な課題として"社会人幻想論"が内包されています。

 近年の風潮で"社会人幻想論"というと、サラリーマン批判に終始してしまいますが、それはある種の口当たりの良い要素でしかなく本来はフリーランスも含め、社会人として働いているだけで価値があると思っていることに問題があるのです。つまり、厳しい表現ではありますが、仕事に於いてコントリビューションやコミットメントを発揮していない人材は総じて"幻想"に生きているのです。

 高度経済成長期のような人口が増加傾向にある産業社会では、数の論理が成立するため、強ち幻想ではなかったでしょう。しかし、人口減少へと向かう情報社会では業務の中抜きが重要となり、貢献度が低い人材や、直接的に利益創出へのポジションを取っていない人材は、価値が大幅に低下してしまい最早、社会人に成ったからといって何の価値も無くなってしまうのです。また企業サイドも、解雇規制だけではなく感情的な要素も含めて、人員整理の難しさは有りますが、今行わなければ体力を消耗してしまい、企業活動そのものが成立しなくなってしまうという圧力を抱えています。
 その為に企業や組織、社会から、労働市場の大量なリストラクチャリング(再構築)が始めなければならないのです。


 但し、余剰人材を自己責任として切り捨ててしまう行為は、一企業では必要な処理であっても、社会全体で捉えるとマイナスでしかありません。以前から指摘しているように、切り捨ては"負債"となりますが、再活用を構築すると"資産"となるのです。

 特に、企業や社会で余剰人材を不要だと扱うと、そこには感情的な抵抗感が生まれてしまい、社会変革の波が止まってしまいます。だからこそ、BI(ベーシックインカム)の導入や高額退職金、学び直しと再活動の機会提供などが行える社会変革も、合わせて必要なのではないでしょうか。現行の社会に問題があることは、再三指摘されているにも関わらず、一行に進まない理由は単なる利権だけではなく、変革後のビジョン共有が明確になされていないことにもあるように感じます。


 サラリーマンを批判し、フリーランスを輝かしく語ることは口当たりが良いでしょう。また、自己責任論を用いて人材を捨てることも簡単で口当たりが良いでしょう。本当に口当たりが悪く、取り組まなければならない課題は、 "企業単位の人材整理と共に、社会単位の人材活用" なのです。

 

 

 

選挙の虚無感

 7/5に東京都知事選を控えていますが、日本社会の選挙は若年層(15~34歳)にとって虚無感が漂っています。フィジカルに投票所に行かなければならない点も、働き盛りにとっては厳しいものがありますしそれ以前に、多数決の論理である選挙では人口比率の性質上、意見が殆ど繁栄されないのです。ここでも、社会人幻想論やジェンダー問題と同様に、人口減少が課題として浮き彫りとなります。

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総務省 衆議院議員総選挙における年代別投票率の推移 ※1

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総務省統計局 人口推移(平成29年10月1日現在)結果の要約 全国人口 ※2

 

 前述のように中間管理職の中抜きや事務処理のデジタル化、就職以外の選択などを行おうとしても、世代間のコンセンサスが取れず親ブロックやパワハラといった形で外圧を与えてしまっています。優秀な人材を効率よく活用しなければならない少子高齢化社会で、デジタルネイティブ世代が本来持っている筈の才能を失ってしまっては意味がありません。DXも正直なところ、デジタルネイティブ世代に任せれば外注をしなくてもある程度進むのではないでしょうか。

 このような世代間の隔たりが、年金問題や社会保障費などを含めて日本の制度設計を静かにデッドロックへと追いやってしまっていることに目を向けなければなりません。年配者には関係ないような課題ではありますが、社会成長が鈍化すれば当然、消費税増税のように日本に在住する全ての国民へ負担が強いられるのです。あなたの、お子さんやお孫さん、大切にしている教え子や後輩の方、そうした次の世代に負担を残さないためにも、口当たりの悪い選挙改革を行わなければならなりません。

 ただ改革といっても存外単純で、選挙のデジタル化と、人口比率に合わせて一票の価値を是正するだけで実現可能なのです。黙視による”年齢別振り分け”などを行えば、地獄でしかありませんが、デジタル投票であれば自動で算出してくれます。勿論、フィジカルな投票所も残すこととなりますが、年齢層は一定に絞られるので、仕分けは難しくない筈でしょう。

 後は副作用として、マイノリティ優位の社会制度が民主主義として正しいのかという問いが生じますが、若年層へのリテラシー教育が新たな市場として活性化するので、結果的に良い方向へ向かうと思います(副作用的に教育の質に左右される問題も出てきますが)。投票年齢を引き下げても、現行の学校教育では社会課題へのリテラシーが養えるようには思えません。


 昨今、若年層の票を集めようと "若者は選挙へ行こう!" と謳っていますが、それだけでは虚無への橋渡しにしかなりません。票集めのポジショントークは捨てて、社会課題へ振り向く必要があります。

 


 本日はここまでです。企業改革や若者の意識改革のような一見、口当たりの悪いことを言っているようでも、実際は根本的解決へと向かわない表層部でしかなく、その先には更なる”口当たりの悪さ”が存在するものです。そこに触れてこそ、価値のある社会変革へ向かうのではないでしょうか。
 次回は、リテラシー教育について触れたいと思います。


 

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-引用・参考-

※1 総務省 衆議院議員総選挙における年代別投票率の推移

※2 総務省統計局 人口推移(平成29年10月1日現在)結果の要約 全国人口