勾玉日記

黒川 和嗣のブログです。

"21世紀の産業革命が求められる理由"

 黒川 和嗣(くろかわ かづし)です。本日は、日本企業における既存システムについて、”不正”の観点から考察していきます。 

■時代との乖離
 高度経済成長期の日本では、品質保証(以下、品証)が強みとして挙げられていました。それは画一化教育による、斑のないクオリティや、同調圧力と悪平等意識による、従順さによって支えられ、歩留まりの高さとして「品証」をブランディングをしました。
 しかし近年では、自動車産業などで、品証を揺るがす問題が取り沙汰されています。個別の善悪は脇に置き、不正問題の本質は、既存システムと社会情勢との乖離が原因ではないでしょうか。


■変化に対する遅延
 前述の通りこの不正問題は、製造技術の衰退や日本人の倫理観低下などだけが理由なのではなく、構造上の問題だと考えています。品証をブランディングとして守っていた当時は、需給共に人口リソースは潤沢で、それとは逆にテクノロジー実装は未成熟な時代でした。その為、勤める従業員の役割は明確であり、複雑な手続きも許容されていたのですが、労働人口が減少し、手続きのテクノロジー実装が可能となった現代において、多くの規則や規定は、生産性向上を求められる現場で足枷となっています。
 
 つまりネットの普及と共に、市場経済が生々流転としているにも関わらず、規則や規定、更には法律や制度、企業体質など社会システムだけが過去の「惰性」で維持されてしまっているのです。
 本来であれば、システムも効果測定などを通じて、変化させるべきなのでしょうが、長期的に内需が強かった為、グローバル経済へのシフトが遅れてしまったのでしょう。


■システムの形骸化
 この問題は、製造業に限った事ではないと感じています。先日、「SUTS」という海外ドラマを観る機会があったのですが、この物語は記憶力が非常に優れている主人公が学歴詐称を行い、弁護士事務所で弁護士として勤務する、というものです。言うまでもなく詐称は社会的に犯罪ではありますが、事務所の所長や上司はその頭脳を頼りにし、同僚であり主人公の彼女でもある女性は、主人公の人柄を優先し関係を深めます。この脚本では、主人公の葛藤だけではなく、ある「乖離」がテーマとして見えてきます。
 それはつまり、このドラマでは優れた頭脳を持つ主人公が、既存のシステムを飛び越えて活躍する、と描かれていますが、実社会に置き換えると、この”主人公”は私達にとってのスマホでありAIであり”テクノロジー”の事を指し、その特異な技術を、既存のシステムがコントロールすると、実社会との乖離が起き、何らかの「歪み」が生じてしまいます。その歪みが、才能を無駄にする事なのか、不正をしてしまう事なのか、イノベーションを起こす事なのか、そこは個別の倫理観に依存するのでしょう。しかし、このテクノロジーと既存システムとの「乖離」が、構造欠陥の一要因となっています。
 
 前章でも触れましたが、ましてや日本のシステムは、従来のドメスティックな競争システムから、グローバルな競争システムへと変化を求められ、更に人口減少により生産性向上を要求されていますので、システムが形骸化していく事は瞭然たることです。
 

■既存システムのアップデート
 近年の不正問題に対する反応は、当然ながら責任追求の姿勢となってしまいます。勿論、人命に関わるケースもありますので、その感情を理解する事も出来ます。しかし、不正を叩くという空気感の元、脊髄反射的に同調し既存のシステムをベースに規制強化や順守する事を求めていても、前進は見られないのではないでしょうか。それよりも再発防止策として重要なのは、既存システムをベースにするのではなく、実社会との乖離を分析し、更新させる事です。すなわちそれは、規制強化でのアップグレード(機能拡張)ではなく、システムのアップデート(更新)を行わなければなりません。 
 

 今回、不正をテーマに考察しましたが、既存社会において、アップデートすべき「乖離」は、皆さんの身近なところにも、存在するはずです。特に先進国は高齢化問題と共に衰退すると言われる現代、日本を持続可能な社会にするために、過去の惰性ではなく、小さな事であっても既存システムのアップデートを意識する必要があるのではないでしょうか。
 
 本日はここまでです。あなたにとって、既存システムへの疑問を持って頂くきっかけになれれば幸いです。次回は芸術に関し起稿したいと思います。

 

 

 

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Photo: Sean Pollock