勾玉日記

黒川 和嗣のブログです。

"米中貿易摩擦の出口"

 黒川 和嗣(くろかわ かづし)です。本日は、米中貿易摩擦について既に多くの専門家の間でも意見がなされている内容ではありますが、その内容を纏めながら考察を行います。 

◼︎両国の立場
 米中貿易摩擦に関して、未来予想を行うには不確定要素が多く、非常に難しいところではあります。ただ米国で11月に行われる、中間選挙が軸となっている事は明確で、その期間がトランプ大統領の方向性を決定する、大きな分水嶺となるでしょう。
 対する中国政府は、外交や軍事力、経済力などでアジア諸国に限らず、国際的な影響力の強化を進めている現状を鑑みれば、貿易面で直接的に譲歩する事は、非常に難しい選択だと考えられます。中国は既に国際社会において、米国に次ぐ影響力を保持している訳であり、大国として圧力に屈する姿勢を示してしまう事は、中長期的に不利益となるからです。
 ただ中国としても、現状維持を長期に渡り許容する事が出来ないのも事実で、そうなると為替や北朝鮮問題、中東問題、外資の規制緩和など、別の切り口で、調整を行なう可能性が高いです。

 

◼︎朝鮮半島情勢
 これらの前提条件の中で、米中両国として直接的に国益に影響が少ない案件として、最も可能性が高い交渉材料は「朝鮮半島情勢」ではあるでしょう。
  中間選挙におけるトランプ大統領の成果としては、NYダウ平均株価の上昇、米国就業者数の増加、米朝会談の実現などです。しかし貿易赤字の是正に関しては、各所からの批判も大きいく、具体的な成果を中間選挙までに出すと言うよりは、あくまでも「強硬姿勢を示す」ことを目的としています(勿論、是正への取り組みは本気でしょうが。)。目先の達成可能な成果としては、北朝鮮の非核化を前進させる事でしょう。つまり、米国の重要課題は「北朝鮮の非核化を中間選挙まで、どれだけ前進させられるか」だという事です。
 また米国は軍事的な側面においても、内向きな政策に動いています。その点は、トランプ大統領が朝鮮戦争終結について言及をした事から見えてきます。今までのトランプ大統領の行動を考慮すると、彼の発言を鵜呑みにする事はできませんが、仮に朝鮮戦争が終結した場合、国連軍として在韓する米軍は90年代からの再編以上に、影響力を減らしていく事になります。つまり、在韓米軍のミサイルはロシアのみならず、中国にも機能している以上、今の朝鮮半島情勢は北朝鮮の非核化という「米国の成果」だけではなく、「中国にとっての脅威」という文脈でも語られる案件でしょう。

 米国の国際社会での影響力が衰退するのではと言われていますが、テクノロジー関連をはじめ、米中の対立は今後も続く事は明らかであり、冒頭でも触れたように不確定要素も多く一概には結論付け出来ませんが、材料の一つとして「朝鮮半島情勢」が考えられるれるでしょう。

 

 


 今回のテーマとした「米中貿易摩擦」において、中長期的に世界各国へ影響を及ぼす課題であるにも関わらず、トランプ大統領の従来の行動からして、出口が見えない状況です。だからこそ、一つ一つの課題に対して、分析を行う事が重要な意味を成してくるでしょう。

 また日本においては、蚊帳の外であるかどうかではなく、北朝鮮との国交正常化や対米貿易交渉などに向け、安全保障についての議論を深める必要性と、対中関係においては、日本の依存度の高さを踏まえ、対立路線ではなく如何に中国へ提案できる材料を増やすかがポイントとなってくるでしょう。その視点においても、考察したいと思います。

 

 

 

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Photo: Feliphe Schiarolli