勾玉日記

黒川 和嗣のブログです。

”自粛という延長と延命の狭間「国民感情が引き起こす作用」4/4”

 黒川 和嗣(くろかわ かづし)です。5/1に緊急事態宣言延長の方針が固まりました。これは当初から想定されていた方向性で、本稿でも指摘してきたように”出口戦略無き規制は永遠に続く”というものです。規制を掛けると=緩和の”理由”が必要であり、明確な条件設定をしなければなりません。それが実行再生産数を1未満に抑えることなのか、自粛割合を8割にすることなのか、医療リソースの余剰割合なのか。これらのKPIを定め、社会活動と抱き合わせながら対策やシステムを構築し、国民に開示する必要性があります。(詳細については過去記事の、”仮想需要と五感的解像度””イシューがTwitterの果てに”などを参照下さい。)
 今回は、自粛という延長と延命の狭間で何が起きていて、何を目指すのかを考察したいと思います。

「COVID-19 国民感情が引き起こす作用」3/4

第1項 "政策決断に於ける3指標"

第2項 "ディストピア的出口戦略"

第3項 "イシューがTwitterの果てに"

第4項 "自粛という延長と延命の狭間"

 

 

 

■延長に伴う補償拡大
 今回の大きなポイントは、上記の基準値策定と、延長に伴う補償拡大、修学率の格差、自粛範囲の規定です。補償問題は前回の”雇用の変化”とも関係する内容ですが、4月の時点で非正規雇用者(派遣、アルバイト、パート、個人事業主)には、収入減や無収入者(失業者)などが出ており、来月には更に倒産や人員整理による割合が増えると予想されます。こちらは山猫総合研究所※1さんと創発プラットフォーム※2さんが出したものがとても分かり易かったので、引用させて頂きます。平時であれば、自己責任ですが、政府が市場に介入する”有事”では、その限りではなく補償されて然るべきかと思います。

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「新型コロナウィルスに関する緊急世論調査※3」by 山猫総合研究所 / 創発プラットフォーム

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「新型コロナウィルスに関する緊急世論調査※3」by 山猫総合研究所 / 創発プラットフォーム

 

■修学率の格差
 修学率の格差に関しては、”出口戦略から次のフェーズへ”のテーマにもなる”格差”に根差すところが多いです。その点は別途寄稿しますが、ここで触れたておきたいことは”9月入学”についてです。
 私はこの議論を懐疑的に捉えています。そもそもの目的は、修学の遅延を取り戻すための議論であったはずが、国際基準化という平時的議論に移っているからです。9月入学を実行するには、学校のみならず、塾や専門、受験までを含む全ての教育体制を一新しなければならず、到底、現在の行政リソースでは対応が出来ないでしょう。それよりは現実的に、オンライン授業へのインフラサポートや教育内容の一元化、評価基準の見直しが必要です。しかし、そこには家庭環境へのサポートも当然ながら必要になるので、多くの地域では済し崩し的な学校再開になりそうです。そうであれば先伸ばしにせず、早期再開へ踏み切る決断も必要になるのではないでしょうか。

 

風俗の隠れ営業
 最後に自粛範囲の規定ですが先日、ダイアモンドオンライン※4さんがこのような記事を取り上げていました。

 岡村隆史発言に風俗店幹部が怒る理由「あんた何にも分かってない」

 この記事に”風俗街の中には一帯の店舗が軒並みシャッターを下ろし、「休業」と張り紙をしているところがある。「しかし実際には休業中としている店舗でも、なじみのお客さんなどを受け入れてヤミ営業しているところがあります」~(略)~8割以上の店舗が通常通りの営業を続けている“通常運転”の風俗街もあるという。"とありました。いつ頃の段階なのか、どの地域で規模感はどの程度なのか、真実は分かりませんが、他方でもガールズバーの”隠れ営業(自粛なので闇営業は言い過ぎかと)”などの情報があるので、十分にあり得るケースだと考えています。

 仮に、パチンコ屋への対処が医学的根拠に基づくものであるならば、感染リスクが証明されているこちらへの対処も、同様かそれ以上に必要ではないでしょうか。ジョギングへの感染リスクを唱える反面、”風俗”は存在しないかのような世間や政治家の風潮には些か疑念を感じます。
 全面封鎖思考ではなく、効果的なピンポイント自粛を行わなければ効果が得れず、自粛にしたがっている低リスク業界が全て破綻してしまいます。

 

 今回はここまでです。本来の自粛効果は、社会全体が延命されなければなりません。勿論、痛みを伴わないという意味ではなく、痛みを最小限にしてという意味でです。しかし、現状のエビデンスより国民の不安新心理が優先されている全面封鎖では、社会全体の首を絞めているようなものです。この”狭間”での出来事を見ずして、次の戦略などありません。”希望”は乗り越える戦略があるからこそ”希望”なのです。私は今回の狭間を安易なチャンスとは言いたくありません。しかし、一つだけ言えることがあります。

 

”若者は楽しめ、行くあてはある。 

 中年はもがけ、やることはある。

 熟年は捧げろ、与えるものはある。 

 よってたかって、今を生きろ。” 

 

 自粛という延長と延命の狭間で、今を生きてください。

 

 

※記事を読んで下さる皆様へ.本稿の内容に興味をお持ち頂けたなら、大変に光栄です.

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[黒川 和嗣(Kazushi Kurokawa)Twitter ]

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Photo by Warren Wong on Unsplash

【引用】
※1  山猫総合研究所
  https://yamaneko.co.jp/
※2 創発プラットフォーム
  http://www.sohatsu.or.jp/
※3 新型コロナウィルスに関する緊急世論調査
  https://yamaneko.co.jp/news/release/report_novelvirus20200501/
※4 ダイアモンドオンライン
  https://diamond.jp/