勾玉日記

黒川 和嗣のブログです。

"世間が踊る、ポスト安倍の実態"

 黒川 和嗣(くろかわ かづし)です。今回は”コロナの総括”を行うつもりでしたが、

先週から巷を騒がせている"ポスト安倍"の報道がコロナ煽動からとって変わり、まるで陽炎のような熱波を持ってして"蜃気楼"を演出してしまっているように感じています。今回の安倍首相の辞任は飽くまでも体調問題ですし、選挙対策や現行の外交や感染症の政策を鑑みると次期政権は現状維持政権となることが明白です。しかし、与野党とも選挙を見据えて活発化しメディアも感染症がネタとして味がじ無くなったことも相まって必要以上に熱波を送っています。

 

 今回は形式的ではありますが、このポスト安倍について簡単に触れておきたいと思います。またそれに伴い、次期政権の政策について各メディアでは近視眼的な政策議論(コロナ対策や地方創生、減税など)がなされていますが、本稿ではもっと抜本的な踏み込んだ政策について、ざっくばらんに考察を行いたいと思います。

 

■安倍政権の成果

 辞任発表の衝撃は瞬く間に世界各国に広がりましたが、ここまで他国へ影響力を持った総理大臣は歴代でもいないでしょう。勿論それは安倍氏の手腕だけの成果ではなく、急速なグローバル化に伴い戦後もっとも外交力が必要だった時代性に起因しています。ただ、加速度が増し変数が増え続ける現代の国際社会で、日本のプレゼンスを示せたことは成果として称賛されるべきことだと思います。

 Twitterなどでも触れていますが政権の盤石さは、国内視点で捉えている以上に、価値の高いものなのです。日本視点での韓国を想像すると分かりやすいと思うのですが、前政権で不可逆的な解決を行った国家間の取り決めを政権交代後に反故とされてしまうとどうでしょうか。安心して交渉も出来ませんし、信頼関係も失い、相互依存性を高める協調より、リスクヘッジによる排除の気運が高まってしまうものです。長期政権には功罪があるにせよ、経済、外交に大きな恩恵をもたらしたことは事実です。 

 

■ポスト安倍

 表向きは"コロナ対策政権"とされていますが、冒頭で述べたように実質は"現状維持政権"となるでしょう。これには理由がいくつかあり、1つは前提として辞任理由が選挙で敗れたことではないということ。これは現状維持を行う上で最も重要な”言い訳”となります。次に安定政権を再び確立するには、派閥の関係性を崩さないことにあるからです。この点は民主主義の観点からすると非常に問題を感じざるを得ない部分ではありますが、先にも挙げたように安定政権の恩恵を鑑みると短中期的には受け入れるしかないでしょう。そもそも、民主主義の健全化を議論するのであれば二大政党制を確立できない野党にこそ大きな課題がある筈です。

 

 またこの派閥の維持に関連して"石破封じ"は明確に意識されています。今秋若しくは来年の選挙を見据えた辞任であることも含めると当然の対策です。つまり、"党派的盤石な安定政権の継続"を目的とする自民党内では、中長期的に菅氏、岸田氏を据え、その期間で小泉氏など後継者に要職を任せて育てるという方針なのでしょう(河野氏は党内の支持が固まっていないので当面は未知数です)。

 

 前述の路線が既定路線だとして、その上で政策や方針を考えるのであれば突出すべきは外交力よりも、国内課題をファクトベースで解決できるのかです。正直、安倍首相以上の外交力を発揮できる総理大臣は現れ難いでしょう。であれば、その点を党派的盤石な安定政権を維持することで補い(せめて任期までは満了する政権)、DX(デジタルトランスフォーメーション)をはじめとしBI(ベーシックインカム)も含めた抜本的制度改革を視野に入れることです。 

 但しここが相当に難しく、党派性が強ければ当然、利権やロビーにおもねるものです。この反語的要素を乗り越えることは安倍政権ですら出来ませんでした。しかし、今後の将来を見据えた時に社会課題までもが”現状維持”とされてしまうと、とてもではありませんが破綻してしまうでしょう。

 

 すでに行政改革(DX)、人権意識、余剰人材対策、新社会保障制度(BI)など、課題の根源とも言える要素の見直しは差し迫っています。

 

■行政のDX化

 安倍氏の体調問題が今回の辞任原因となりますが、ネットでは安倍氏の日程画像が拡散され"自身より忙しいか否か"の議論が広がっています。この議論に意味がないことは当然ながら、本質は"時間軸の予定が埋まっているか"ではない筈です。それは時間給の労働者であれば時間軸ですが、政治家は会食も含め寝ても覚めても政策勉強や意見交換、根回しが必要な職業であり、一つ一つの質や効率性(生産性)が求められるものです。だとすれば今回の件で議論すべきは"質(生産性)として低い活動がないのか" "もっと効率的な方法はないのか" というシステムの見直しです。

 

 例えば、非同期コミュニケーションツールで事足りる国会などが最たるものです。国会答弁の映像をご覧になられた方はご存知でしょうが、誤解を恐れず申し上げるとパフォーマンス以上の何物でもありません。意見交換と言っても何かが決まる訳でもなく、書類を読み上げる為に高額な人材が何十人と集まって何時間と費やすのです。更には、読まれもしない関連書類を高学歴人材に雑務として作らせているのですから、DXや働き方改革からは最も遠い世界線でしょう。また、総理大臣の出席義務が発生するケースもあり、国会の制度改革を行うことで健康問題の緩和にも繋がります。

 

 他にも財政や地方行政の改革へ密接に関わる課題として"デジタルIDの活用"が挙げられます。デジタルIDによって情報の管理が進むと、徴収、給付、書類発行など行政手続きが圧倒的に効率化されます。ここにデジタル通貨やヘルスケア情報、免許証類の情報なども加われば、効率化だけではなく財務コストが大幅に削減されます。この論点では必ず"個人情報の保護"への懸念が取り沙汰されますが、金融では税務署によって既に管理されていますし、住所や家族構成なども"戸籍"として全て管理されています。言うなれば戸籍をIDとして一括管理を行うに過ぎません。つまり、現金を用いて脱税でもしていない限り問題はない筈です。

 このようにトップの行政システムにDXを取り入れ、総理大臣自身が働き方改革を行うことは、クールビズがトップ主導で浸透したのと同じく、地方行政や教育現場などの国家運営全体のシステム改革にも繋がる重要なファクターなのです。その意味でも、今回の健康問題を単なる"時間軸での忙しさ"で議論を終えるのではなく、本質的な日本の生産性にまで推し上げて議論を進めて頂きたい限りです。



 本日はここまでとします。今回は形式的な内容に留まりましたが、次回は以前から指摘している人権問題とBIについて考察を行いたいと思います。このどちらもが感染症対策によって顕在化した"日本の病巣"を改善するために必要な要素です。

 人権は男女均等ばかりが謳われますが、大省人化時代に伴い余剰人材が増えると"再就職差別"など新たな課題が発生します。年齢やブランク、学歴、性別、実家暮しなど、就業能力とは全く関係のない項目で雇用機会を喪失してしまっています。これは新卒一括採用から終身雇用を行っていた時代の名残であり、"人材は流動しない"ことを前提として組まれているからです。しかし大省人化時代にこの制度を適応してしまうと30代〜50代の多くの方が再就職困難者となることでしょう。

  また、今回の不況を余剰人材を抱えた状態で"持続的に"乗り越えるには、日本で生産性の高い産業を構築する必要がありそのために、人々の暮らしへ余裕を持たせる必要があります。この時、ベーシックインカムは大きな役割を果たすでしょう。

 


 私達は数年間という長いスパンで行う改革をこの1年で、喫緊の課題として直面することとなりました。だからこそ今、政治に求めるべきはテック企業によるポジショントークの"ニューノーマル"ではなく、日本の病巣へと切り込める盤石な政治なのではないでしょうか。そして、保守的に利権へおもねることがないように、国民である私達はメディアによる"蜃気楼ではない、正しい理解"を持って声を挙げる必要があります。

  

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