勾玉日記

黒川 和嗣のブログです。

"大省人化時代を生きる −情報のガチャ化と中間層の成熟"

 黒川 和嗣(くろかわ かづし)です。4回に亘り日本の"口当たりの悪い社会課題"について考察してきましたが、それらの課題を解決する上で鍵となる要素は"リテラシー教育"と"中間層の成熟"にあるのではないかと考えています。他方で、リテラシー教育の基礎としては前回提案した"義務教育の改革論(社会変革のための、義務教育トランスフォーメーション)"を軸に促せば解決されると思うのですが、昨今の教材が徐々にYouTubeやSNSなどのインターネット情報に移行しつつある点に関しても考える必要があります。

 例えば、感染症や三権分立、アフターコロナなど、ネット上には数多くの情報が溢れ返っていますが、中には専門家や研究分析が深くなされた私見も存在します。しかしその反面、バズワードや煽る見出しを用い"数字を稼ぐ"だけに特化した安価な情報も存在し、その情報に多くの人々が右往左往してしまっているのも事実でしょう。

 以前note("140字では語れない、飽和する解説コンテンツの中で")でも触れましたが、情報を薄めて広く伝えるという意味での薄めた情報には価値があるのですが、煽動し注目を集め数字を稼ぐことを目的とした薄め方をしてしまうと、本来存在した本質や点と点を繋ぐ繊維さえも省略されてしまい誤った方向に誘導してしまうこととなります。正に"情報のガチャ化"とも言える現象で、社会の変革期という、教育や成熟が重要となる社会では致命的な現象だと危惧しています。

 本日はこの"情報のガチャ化"が及ぼす危険性を軸に何故今、教育や成熟が重要になるのかを考察したいと思います。




■情報のガチャ化

 "情報のガチャ化"は、情報を時間軸(長期的視点やマクロ的視点)で捉えるのではなく、感情や空気感で捉える当座思考なので、ミスリードや多くの混乱を招いてしまう傾向にあります。本質の欠如ともいえるでしょう。低きではエビデンスのないヘルスケア商品、情報商材などもそうですし、今回の感染症問題でも同じです。

 7/10東京都内で約3,400名の検査を行い、約3,100名は陰性で死亡者数は0名だったにも関わらず、メディアは"約220名の陽性者"を大々的に取り上げ、観光キャンペーンを後退させてしまいました。数字の大小で取り扱うのであれば3,100名でしょうし、そもそもこの問題は感染者数ではなく、死亡者数と感染予防対策の共有、医療の許容体勢にあり、本質が抜け落ちてしまっています。GoToキャンペーンも尾身 茂(新型コロナ対策分科会 会長)さんが記者会で述べたように、三密になる環境が感染症を広げるのであって旅行をしても感染は広がりません。今、目の前に存在する不安心理は煽れば煽るだけ伝染し、長期的な経済後退による社会不安、失業者による自殺、犯罪、財政負担までは議論が及ばないのです。

 こうして俯瞰してみると、情報のガチャ化を単なる詐欺やリテラシー問題としては語れず、煽られた国民感情は日本が直面する課題へ直接影響を及ぼしていることが分かるでしょう。これは日本の特徴でもあり民主主義国家の根幹でもあるのですが、国内の諸問題について国家のトップが決定するのではなく、国民のコンセンサスが必要になってくるということです。だからこそ、安全保障に伴う憲法問題や財政問題、少子高齢化など課題が山積する日本にとって、一部のエスタブリッシュメント層(≒政治や社会に権限のある上流層)に任せるのではなく、国民自ら社会課題について知識を深めなければならないフェーズに向かいつつあります。



■中間層の成熟

 前述の通り民主主義国家である日本は、国内の課題解決を行うために国民のコンセンサスを必要とします。但し、そのコンセンサスとは"全国民の"という訳ではないと考えています。全国民を対象に全体最適解を目指すと必ず、現状のマス的な”当座思考”が優先されてしまい、非合理的で長期的に不利益な選択を行ってしまう傾向にあるからです。なので、全国民ではなく一部の社会課題や政治経済について意識や知識が高い層を重要視すべきでしょう。勿論、全国民がそうであれば良いのですが、興味や関心のない層は必ず発生するので、その層にまで求めることは、現実的でないでしょう。

 

 つまり、エスタブリッシュメント層のように権力や高学歴、柵(しがらみ)などはないものの、煽動するメディアやSNSの偽情報には騙されず、政治や経済、社会課題を能動的に学習し発信を行う層、”中間層”が今後の鍵となってくるのです。

 現在も肌感ではありますがこの層はわりと存在するように思います。こんな今時、流行りもしない”活字の壁”を読んで下さる皆さんは勿論そうでしょうし、巷の起業やビジネス思考などの流行りを見ていてもそう感じます。しかし、ビジネスの場では”宗教と政治の話はしない”という習慣が強すぎて、こちらも当座的な営業力や儲け方などばかりとなってしまい、成熟していない印象があるでしょうか。話題にしないのと、知らないのでは全く意味が変わってきます。そもそも本来なら、政治や経済、社会課題が見えてくると自然と”儲かる”ものなのですが、おざなりにしてしまっています。 

 そして恐らく、中間層の支持政党は自民党と維新の会が多いと思うのですが、現状は中間層も纏りがなく未成熟なので支持する政党も限られてくるでしょう。ただ、この層が成熟してくると政党にも受け皿が必要となりその時、自民党及び野党の成熟にも繋がると思います。

 

 

 本日はここまでです。コロナ禍を経験し、今後は更に経済縮小、生産性向上の波が押し寄せ、大省人化時代を迎えることとなるでしょう。一見、少子高齢化には良いようにも映りますが、大量の失業者や大量のマイクロビジネス化による生産性の低下を招き財政を圧迫することで日本全体の成長が鈍化するでしょう。こうして書くと絶望のようですが、今、日本が抱える社会課題に向き合えば、絶望どころか高齢化先進国として、再び台頭することが出来るのです。その為にも、この”活字の壁”を読んで下さるあなたのような方や、ビジネスに高い意識や知識を持つ中間層の方々が最も重要な存在となるのです。

 そしてその先に、義務教育や選挙制度の改革を行い、安全保障や財政問題の課題を解決する必要があります。

 

 情報のガチャ化に溺れず、中間層の成熟を形成し、大省人化時代をポジティブなものへ変えていければと思います。 

 

 

 

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